〜浦和駅前RC賃貸併用マンションの企画設計プロセス〜
※本記事で紹介する建物は、埼玉県浦和駅前で企画設計を行った賃貸併用RCマンション計画案です。企画設計段階の未成プロジェクトであり、実際の建築が決定したものではありません。

浦和駅徒歩1分で計画したRC賃貸併用マンション全景CG
土地には、その土地に合った最適な答えがあります。
駅前だから高く建てればよい。
容積率いっぱいまで建てれば収益性が高くなる。
一見すると、そのように考えたくなります。
しかし実際の企画設計では、それほど単純ではありません。
土地価格。
建築費。
法規制。
収益性。
住み心地。
将来の資産価値。
これらを一つずつ整理しながら、その土地に最もふさわしい建物を考えていきます。
今回ご紹介する浦和駅前計画も、そのような試行錯誤を重ねながら生まれた企画設計案です。

駅前RCマンション正面外観の中央アングル
最初に考えたのは「どこまで建てられるか」ではありません
この計画は、施主様がタワーマンション最上階の抽選に外れたことがきっかけで始まりました。
その後、不動産情報を調べる中で、浦和駅徒歩1分という希少な土地に出会います。
土地価格と建築費を合わせて収支を考えると、決して余裕のある計画ではありませんでした。
一方で施主様は、
「土地は長期的な資産として考え、建物は賃貸収入も含めて計画したい」
というお考えをお持ちでした。
そこで私も、「何階建てにするか」ではなく、
この土地の価値を最も活かせる建物は何か
という視点から企画設計をスタートしました。

エントランス回り、左側がオフィス、真ん中のシャッター部分が駐車場、右側がエントランス、2階賃貸部分
6階建ても真剣に検討しました
企画設計の初期段階では、床面積をできるだけ確保するため、6階建て案も検討しました。
商業地域では容積率を活かせるため、「より大きく建てる」という考え方も一つの選択肢です。
しかし、検討を進める中でいくつかの課題が見えてきました。
6階部分を成立させるためには大きなセットバックが必要となり、構造計画は複雑になります。
さらに、壁式RC構造ではなくラーメン構造となる可能性が高く、室内には柱型が現れます。
上階をセットバックすると、下階では柱が室内側へ入り込み、家具の配置や間取りにも影響が及びます。
床面積だけを増やすことが、必ずしも住みやすい建物につながるとは限りません。
企画設計では、このような点も一つずつ比較検討していきました。

6階建てRCマンション計画 スタディ模型 北側ファサード(駅入口側)
5階建て壁式RCという結論
比較検討を重ねた結果、この計画では5階建て壁式RC構造を採用しました。
壁式RC構造は、室内に柱型が出にくく、空間を有効に使えることが大きな特徴です。
オーナー住戸では、天井高約3mのリビングや床から天井までのハイサッシを計画していました。
その空間の魅力を十分に生かすためにも、柱のないすっきりとした室内が望ましいと考えました。
また、構造の合理性だけでなく、建築費や将来の維持管理まで含めて比較した結果、この敷地では5階建てが最もバランスの取れた計画であると判断しました。
「どこまで建てられるか」ではなく、
「どの建物が最も価値を生み出すか」
という視点から導き出した結論です。

壁式RC構造を採用した浦和駅前マンション
建築費高騰だからこそ「どこへ予算をかけるか」が重要になる
現在は、建築費の高騰によって、限られた予算の中で計画を進めなければならない時代です。
そのため、
「できるだけ大きく建てる」
ことだけを目指してしまうと、住み始めてからの満足度が下がってしまうこともあります。
今回の計画でも、
建物全体のコストを整理しながら、
住まいとして長く価値を感じられる部分に重点的に予算を配分することを考えました。

コストダウンのため、道路側から見えない南面をコンクリート打放化粧仕上から防汚塗装仕上仕様へと変更しています。

4階のオーナーリビングフロアのある階高が特別に高く設定されています。

コストダウンのため、装飾やタイルなどを排除した目地の構成だけでデザインされたファサードディテール
例えば今回の計画では、
駅に面した北側ファサードにはコンクリート打放しを採用し、
建物の顔となるデザイン性を高めました。
一方で、
見えにくい部分は防汚性に優れた塗装仕上げとし、
建築費とのバランスを図っています。
このように、
建築費を削るのではなく、価値が高まる場所へ予算を配分することも企画設計の大切な仕事です。
オーナー住戸の価値を最大限に高めるという考え方
今回の計画で最も大切にしたのは、
オーナーご家族が長く快適に暮らせる住まいでした。
賃貸住戸は収益を生み出します。
しかし、
オーナー住戸は毎日の暮らしそのものです。
だからこそ、
収益性だけを追い求めるのではなく、
暮らしの質にも十分な価値を持たせる必要があると考えました。

南北両側に高さ3mの窓があり、都市の景色が見通せる奥行きのあるオーナーリビングフロア

南側ダイニングからバルコニーとソファー空間
今回のオーナーフロアでは、
- 約3mの天井高
- 床から天井までのハイサッシ
- らせん階段による立体的な空間
- 柱型のない壁式RC構造
- 南側バルコニーとサンルーム
など、
日々の暮らしの快適さにつながる要素を優先して計画しました。
これは単なる高級仕様ではありません。
「長く住み続けたい」と思える住まいをつくるための設計です。
土地には、その土地に合った最適解があります
同じ広さの土地でも、
建てられる建物は一つではありません。
建築基準法や容積率だけではなく、
周辺環境、
建築費、
収益性、
将来の暮らし方、
資産価値まで考えることで、
その土地に合った計画は大きく変わります。
今回の浦和駅前計画でも、
6階建て案を含めて複数の可能性を検討した結果、
5階建て壁式RC構造という結論にたどり着きました。
企画設計とは、
「建てられる建物」を考える仕事ではありません。
お客様にとって最適な建物を見つける仕事だと私は考えています。

南側ダイニングから北側リビングソファー方向への眺め
まとめ|建物ではなく、暮らしと資産の未来を設計する
建物の計画では、
間取りやデザインだけでなく、
その後の暮らし方や資産形成にも大きな影響を与えます。
今回ご紹介した浦和駅前計画でも、
収益性だけではなく、
居住性、
構造、
建築費、
街並みとの調和、
そして将来の資産価値まで含めて検討を重ねました。
企画設計の初期段階で十分に比較検討することで、
建物は大きく変わります。
もし、
- 駅前の土地活用を考えている
- 賃貸併用住宅を検討している
- RCマンションを建てたい
- 建築費と収益性のバランスに悩んでいる
そのような方がいらっしゃいましたら、
図面を描き始める前に、
その土地にとって何が最適なのかを一緒に考えるところからお手伝いしています。
ぜひお気軽にご相談ください。

エントランスロビーからエレベーターホールと外への見返し

















