
住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。福島県郡山市にあります渡部和生先生による設計の福島県立郡山支援学校を見学してきました。職員の方の許可を頂き外観と内部撮影をさせて頂きました。職員の先生に付き添い頂きながら内部を拝見させて頂きました。夏休み中の突然の訪問にもかかわらず拝見させて頂き大変感謝申し上げます。新建築 2001年7月号に発表された作品です。国内で最も権威のある建築の賞である日本建築学会賞・作品賞を2004年に受賞されています。 渡部和生先生の作品を拝見するのは初めてです。ディテールと空間構成の素晴らしい建築で大変興味深く見学させて頂きました。
2階 エントランス
この建物は斜面からのアプローチとなっていて斜面の上部と下部で2つのアプローチができる構成になっていました。
スパイラルスロープ
この建物一番の見せ場となる集会スペースです。円を描くスロープが素晴らしいです。トップライトの間にある薄い壁は梁の効果があるのでしょうか。初めて体験する空間構成です。とても勉強になります。
スパイラススロープの中央
ワークショップによる子供たちの提案によるものから出来上がったそうです。上下階の視線の交流とスペースの大きさによる段階的なグループ化を設計しているのだそうです。設計意図が反映された素晴らしい空間です。
スパイラルスロープの2階から屋上に登る階段
スレンダーな階段で踏板が透明なだけでなく床部分も透明です。登らせて頂きました。とても細い材で構成されていますが、強度はしっかりあります。とても高度な設計の階段だと思います。勉強になります。
屋上
トップライトの複雑な形が見えます。きちんとメンテナンス用はしごがあります。
エントランスの庇ディテール
非常に薄いシャープな表現の庇はルーバー状になっていて防水仕上げを回避することで実現しているのだと思いました。庇部分でこの考え方は初めて見ました。勉強になります。
体育館 屋上から
屋上の仕上げが砂利敷き仕上げとなっています。これは断熱の効果もあるのかもしれませんが、凍害の回避にも役立っている仕上げなのではないかと思いました。 端部に丸い穴が開いています。庇の吹上荷重の低減を狙っているのでしょうか。この庇は下部に人がいるスペースは無いので本来は必要ないのかもしれません。しかし、この庇があることで視覚的に非常に屋根が軽快に見えるのだと思います。保守的な設計思想でも、アクロバティックなディテールを加えることで建物を魅力的にしていると思いました。勉強になります。 ハイサイドライト 屋上から
体育館の屋根が非常に薄い仕上げに見えます。 スパイラルスロープ付近の屋上トップライト
スパイラルスロープ2階
見通しが良く視線の交流という設計意図がとても良く反映されています。手すりが透明なこともそのためかと思われます。手すりには長孔パンチングのキックプレートがついています。
2階渡り廊下から中庭方向の眺め
外部空間を組み込む手法として、中庭には木デッキや大きな樹木があります。構成がとても素晴らしいです。
ハイサイドライトのあるスペース
スペースの大きさによって段階的なグループ化を図り、連続的な空間構成になることを設計意図されています。中庭方向や空、室内廊下と変化に富んだ視線の抜けがあり素晴らしい空間構成です。ハイサイドライトの下に人の集まるスペースがあります。大変勉強になります。
渡り廊下
建物から敷地周辺に出る渡り廊下です。傾斜地なので2階から地上にアプローチができる箇所があります。
外壁のディテール
コンクリートのふかしが通常より厚くなっているようです。層間目地がシールではなく空目地です。とてもマッシブなコンクリート表現となり美しいです。 ベントキャップ部分は壁面の奥側にしまい込まれていて うがたれた四角のコンクリート穴にプレートが充てられています。 サッシも壁奥側に抱き込まれていて深窓の表現になっています。また、水切りが四角い開口からはみ出さずに付けられていてそれもシャープに見せる表現に貢献していると思いました。大変興味深いディテールです。 アルミスパンドレルの壁面とガラストップライト 木デッキ床
アルミスパンドレルの壁面とガラストップライト入隅ディテール
ドアのアルミスパンドレルに小さな庇がついています。ドアのヒンジがフロアヒンジです。トップライト足元にはキックガードがあります。
内部廊下部分の手すりディテール
手すりが鋼製フレームですが真壁納まりで木ルーバーがついています。
内部廊下部分手すりディテール
2階からハイサイドライトライトが眺められます。透明な手すり壁にはキックガードがついています。ハイサイドライトは3か所あり 空・中庭・2階デッキテラスと変化に富んだ視線の交流がありとても素晴らしいです。
体育館
張弦梁構造の弦がとても細いです。大空間に対するコントラストがすごいです。こんな細い弦は初めて見ました。
体育館舞台側
桁行方向にトラス梁・張間方向に張弦梁の構成です。屋根を軽く見せる設計が素晴らしいです。
エントランストップライト
トップライトが外部にあるので万が一の雨仕舞の不備でもトラブルになりにくい構成だと思いました。トップライトのディテールも結露受けなど簡素化できシャープにできることに貢献しているのではと思いました。攻めるディテールと守るディテールの押し引きが大変勉強になります。
金属パネル スパンドレル コンクリート サッシ ディテール
コンクリート躯体とサッシの欄間部分に換気ベントキャップがあります。ふかしが厚い表現で金属パネルが面一に納められています。
コーナーガード ディテール
躯体を盗んでつけられたコーナーガードがかっこいいです。ふかしが厚いからこそできるディテールなのだと思いました。
渡り廊下床版 コンクリート躯体接合部ディテール
薄く見せるため構面に納められた接合部があります。
外部渡り廊下デッキ
支柱も細く、床版が構面内に受梁が納められて薄い表現になっています。勉強になります。
コンクリート外壁の表現
ふかしが厚いと目地や開口部がとても美しいです。コンクリート打ち放しの表現が際立ちます。立ち上がりの目地がかっこいいです。
外壁のディテール
竪樋と思われますが、外壁に埋め込まれているような表現になっています。スパンドレル下端の小庇がかっこいいです。 庭の構成が素晴らしいです。雪の多い地域だと思いますが、芝があります。
外壁端部のディテール
サッシと躯体の間にはシールが見えますがシール幅と空目地の層間目地の幅が同じにそろえられています。
外部樋ディテール
鋼管を使った樋の外壁接合部ディテールがかっこいいです。塩ビやステンレスの既製品の樋を使わずに、これをやるには結構お金がかかるのですが、効果はとても大きいと思います。
庇 パーゴラ
庇 パーゴラがとてもシャープです。支える柱が細くできるのでより繊細さが際立ちます。とても勉強になる構成です。
木デッキの中庭
低い手すりが設けられた木デッキ敷きの中庭
2階エントランス 車寄せ
雪の降る地域なので長い庇でアプローチの間口を広くとるのにはとても有効なのではと思いました。積雪荷重を考慮しても細くできる柱が素晴らしいと思いました。
庇 パーゴラの影
庇 パーゴラの表現で一つ気になったのが、影が縞状できることです。室内にこの影ができたとき、室内の人がどのように感じるのか気になりました。
福島県立郡山支援学校
ホームページ→https://koriyama-sh.fcs.ed.jp/
住所
〒963-8041福島県郡山市富田町字上ノ台1番地
TEL/FAX
TEL 024-951-0247 / FAX 024-961-5784
アクセス
郡山駅から 乗車できるバス (福島交通) | 郡山駅前バスターミナル ・卸団地 経由 郡山西部工業団地行 ・玉川 経由 熱海行 ・夏出行 ・郡山郵便局 経由 郡山西部工業団地行 ・新国道・卸団地 経由 熱海行 「養護学校前」下車、徒歩5分郡山駅前バスターミナル ・下富田 経由 百合ヶ丘行 ・テニスコート 経由 百合ヶ丘行 「百合ヶ丘団地」下車、徒歩10分※乗り場などについて詳しくは、 郡山駅前福島交通バス案内所をご利用ください。 |
郡山駅からの 所要時間 | バス……約30分 タクシー……約20分 |
高速道路 | 東北自動車道「郡山インターチェンジ」から1分 |
上記の情報は2018/9/26に収集した情報です。詳しくは公式ホームページをご覧ください。