※今回ご紹介する計画は、浦和駅前における賃貸併用RCマンションの企画設計事例として検討した提案案です。
「予算が足りない」ではなく「予算をどこへ使うか」が重要になる時代
近年、RCマンションや賃貸併用住宅の建築費は大きく上昇しています。
鉄筋コンクリート、鉄筋、型枠工事、設備機器、サッシ、ガラス、電気設備など、多くの項目が以前より高額になっています。
今回の浦和駅前計画でも、企画設計段階で概算工事費を確認した結果、コストコントロールが重要なテーマとなりました。
しかし設計とは単なるコスト削減ではありません。
本当に重要なのは、
「どこにお金を使うべきか」
を整理することです。

コストコントロールを考慮したRCマンション正面外観
目地によるコンクリートファサードデザイン

コストコントロールのため、コンクリート化粧打放し仕上から防汚塗装仕上げに変更した目につきにくい裏面の西南外観
なぜ全面コンクリート打放しにしなかったのか
今回の計画地は浦和駅徒歩1分。
駅から歩く人が最も目にするのは北側ファサードです。
そこで、
北側正面のみコンクリート打放し、東西南面は防汚塗装という方針を採用しました。
全面打放しも可能でしたが、その分だけ建築費は上昇します。
重要なのは、建築費を均等に使うことではなく、建物価値を最大化することです。
装飾よりもプロポーションを優先した理由
建築費が上がると、
高級タイル
大型ルーバー
特殊金属パネル
を採用したくなることがあります。
しかしそれらは初期費用だけでなく将来の修繕費にも影響します。
今回の計画では、「装飾を増やす」のではなく、「構成を整える」ことを重視しました。

西側道路から見たRC賃貸併用マンション外観

ガラス手すりと外観ディテールの検討
目地デザインで建物全体をまとめる
この建物は、
1階 テナントオフィス
1階 オーナー駐車場
1階 エントランス
2階・3階 賃貸フロア
4階 オーナーフロア (リビングフロア)
5階 オーナーフロア(個室郡)・賃貸フロア
という構成です。
階高も用途も異なります。
そのため何もしなければ雑然とした外観になります。
そこで目地の位置をコントロールし、ひとつの建築として見えるよう整理しています。

オフィス・駐車場・エントランスの構成が分かる外観

4階オーナー住宅-玄関からリビングの眺め

4階オーナー住宅-エントランスから南北に広がるリビングダイニングキッチン

4階オーナー住宅-北側ソファースペースから南側ダイニングキッチンへの見返し

4階オーナー住宅-南側ダイニングからバルコニーとソファー空間
オーナーフロアには積極的に予算を投入する
コストダウンだけを目的にした設計ではありません。
今回の計画で最も重視したのは、オーナーが毎日生活する空間です。
具体的には、
天井高約3m
床から天井までの大型サッシ
らせん階段
大きな気積を持つリビング
に予算を投入しています。

エントランス正面

不燃木ルーバー天井を持つエントランス
エントランスも「全部高級」ではなく「一点集中」
今回のエントランスは、壁面はコンクリート打放し、天井のみ木ルーバーという構成です。
もし壁・床・天井すべてを高級仕上げにすると建築費は大きく上昇します。
そこで、人が最も印象を受ける天井に予算を集中しました。

都市の景観を切り取るハイサッシのデザイナーズ寝室
バルコニーのある窓と床から天井までの窓の二つの窓辺が楽しめます。

エントランスからエレベーターホールへの動線

左からテナントオフイス オーナー駐車場 エントランス 植栽が並ぶ眺め
設計者の仕事は優先順位を整理すること
設計とは、すべてを実現する作業ではありません。
限られた予算の中で、
何を残し
何を削り
どこへ投資するか
を決める作業です。
今回の計画では、
- 北側ファサードに予算を集中する
- オーナーフロアの居住性を優先する
- エントランスは一点豪華主義とする
- 見えにくい外壁は合理化する
という考え方で整理しています。
建築費高騰時代だからこそ、
「安く建てる」
ではなく、
「価値が残る場所へ投資する」
という考え方が重要になると考えています。
この企画設計事例の別記事「浦和駅徒歩1分で考えた「タワーマンションを買わない」という選択肢」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
建築費高騰の時代において、建物の価値は単純な工事費の総額では決まりません。
どこへ予算を投入し、
どこを合理化するか。
その優先順位によって建物の質は大きく変わります。
今回の浦和駅前賃貸併用RCマンション計画は、コストコントロールと居住価値の両立を目指した企画設計事例として検討した提案案です。
RCマンション建築、賃貸併用住宅、土地活用、建築費高騰への対応をご検討中の方は、まず計画の優先順位を整理することから始めることをおすすめします。

















