※本記事で紹介する建物は、浦和駅前で計画された賃貸併用RCマンションの企画設計事例です。
掲載しているCGパースは企画設計段階で作成したものです。
タワーマンション以外の選択肢を検討したいという相談
都市部で住宅取得を考えると、多くの方がまずタワーマンションを検討します。
今回の施主様も、浦和駅前のタワーマンション購入を検討されていました。
しかし検討を進める中で、
- 駅徒歩1分でもエレベーター待ちが発生する
- 管理費や修繕積立金が将来増加する可能性がある
- 住宅ローンを支払っても賃料収入は生まれない
という点に疑問を持たれていました。
そこで生まれたのが、
「駅前の土地を購入し、自宅と収益不動産を一体で計画できないか」
という発想です。
今回の計画は、その相談からスタートしました。

駅前道路から見上げた賃貸併用マンション計画案

浦和駅前の土地活用を検討したRCマンション外観CG
駅徒歩1分という立地価値をどう活かすか
土地の条件
計画地は浦和駅徒歩1分。
商業地域内に位置する約200㎡(約60坪)の敷地です。
駅前の土地は価格も高く、限られた面積の中で何を優先するかが重要になります。
また、計画地周辺は中高層の建物が建ち並ぶ駅前商業地です。戸建住宅として利用する方法もありますが、2階建てや平屋の住宅を計画した場合、窓から見える景色の多くが周辺建物となり、上階から見下ろされる環境になることを施主様は懸念されていました。
そのため今回の計画では、駅徒歩1分という利便性だけでなく、都市部で快適に暮らすための住環境についても検討を行いました。

駅徒歩1分の敷地で計画した都市型賃貸併用住宅
建物構成
1階にはオフィス、オーナー駐車場、エントランス。
2階・3階には賃貸住戸。
4階・5階にはオーナーフロアを配置しています。
土地の価値を活かしながら、自宅と収益不動産を一体で計画した提案です。

コンクリート打放しファサードを採用したRCマンション計画
自宅だけではなく収益も生む建物へ
都市部特有の厳しい高さ制限に対しても、「天空率」という計算手法を駆使することで、建物の壁を斜めに削ることなく、垂直で強固な躯体を維持しています。これにより、デッドスペースのない使いやすい空間を実現しました。
複雑な形状を避けることで、工事費のコストダウンを実現しつつ、構造的な安定性を最大限に高める設計としています。
賃貸住戸の構成
収益性を考慮し、
- 1LDK 2戸
- ワンルーム 3戸
を組み合わせています。
当初は、1フロアを1住戸とした約100㎡の3LDKを配置し、入居者数を抑えることで管理負担を軽減する案も検討しました。
しかし、1戸あたりの賃料が高額になることから入居者が限定されやすく、退去や更新のタイミングによる収益変動も大きくなります。
そこで本計画では、1LDKとワンルームを組み合わせることで募集対象を広げるとともに、住戸タイプを分散することで収益変動リスクを抑える構成を採用しました。
駅前立地であっても、将来にわたり常に満室が続くとは限りません。事業計画においては、収益の最大化だけでなく、空室発生時の影響を抑えるリスク分散も重要な検討項目となります。
都市部の賃貸経営では、単に戸数を増やすのではなく、収益性とリスク分散のバランスを考慮した住戸構成が重要になると考えています。
オーナー住戸も単に最上階に配置するのではなく、4階と5階を一体利用するメゾネット形式としています。

1階はオフィス、2・3階は標準的な天井高の住戸ですが、4階のオーナーフロアは天井を3mと高く確保し、格別の開放感を実現。階数ごとの機能の違いを外観の窓配置で表現しています。
オーナー住戸の考え方
オーナー住戸は単に最上階に配置するだけではありません。
4階と5階を一体利用するメゾネット形式とすることで、一戸建て住宅のような豊かな居住空間を計画しています。

北側バルコニー前のリビングソファかららせん階段を抜けて南側サンルームと南側ダイニングへの眺め
建築費高騰時代に求められる考え方
近年の建築費高騰は、都市部のRCマンション計画にも大きな影響を与えています。
今回も概算工事費を確認した段階で、コストコントロールが重要なテーマとなりました。
コストコントロールの方法
一般的には全面コンクリート打放しとする考え方もあります。
しかし本計画では、
・北側ファサードのみコンクリート打放し
・東西南面は防汚塗装仕上げ(コンクリート打放し仕上より単価が安い仕上です。)
という考え方を採用しています。
建築費を抑えるためにデザインを諦めるのではなく、どこに予算を投入するかを整理することが重要だと考えました。

街並みに馴染む道路側に対し、反対面の南側には汚れに強い防汚塗装を採用。
物価高騰の中でも「美観」と「コスト」の両立を目指し、オーナー様・居住者様にとって永く経済的な選択を追求した外壁仕様です。

都市型RCマンションのエントランス外観CG

賃貸併用マンション正面ファサードデザイン
装飾ではなくプロポーションで魅せる外観
今回の計画では、
・大型ルーバー
・装飾タイル
・特殊外装材
などを極力採用していません。
その代わり、
躯体の目地計画
開口部のバランス
階高の変化
によって建物全体を構成しています。
ファサードデザイン
コストを抑えながらも、建物全体のプロポーションによって都市景観に調和するファサードを目指しました。

コンクリート打放しファサードのディテール検討

目地デザインで構成したミニマルな外観計画
オーナーフロアは分譲マンションと何が違うのか
この計画で最も重視した部分の一つがオーナーフロアです。
天井高3mの住空間
一般的な分譲マンションでは天井高2.4m程度が多く見られます。
一方、本計画では梁下約3mの天井高さを確保する方向で計画しています。
また床から天井まで伸びる大開口を採用し、都市居住でありながら広がりを感じられる空間を目指しました。

オーナーフロア 画面左からリビングソファ 上階個室郡へ続くらせん階段 南側サンルーム ダイニング キッチンの玄関からの眺め
メゾネット構成
5階個室群と4階リビングをらせん階段で接続し、一戸建て住宅のような立体的な住まい方を提案しています。
※オーナーフロアの詳細については別記事で詳しく紹介します。

光と風が通り抜けるオーナーフロアのリビング。南から北まで視線が繋がる設計と、開放感あふれる3mのハイサッシで、都心にいながら圧倒的な広がりを感じる空間です。
「建築家は、何を残し、何を削るかを決める相談役です」
建築家の仕事は、単にデザインを描くことではありません。
敷地の可能性を引き出すために、構造、事業性、住環境、コスト、そして法規制という多様な条件を徹底的に整理し、どの要素を優先すべきかを判断することにあります。
今回の計画において、私たちが5階建てというボリュームを導き出したのも、この判断の結果です。
本計画で5階建てを選択した最大の理由は、空間の「純度」にあります。
設計の段階で、余計な柱や梁(はり)が部屋の四隅に出ない構造を採用しました。
これにより、室内は角まで無駄なく、すっきりとした四角い空間が実現します。
インテリアを自由に配置できるだけでなく、光が部屋の隅々まで届くため、実際の広さ以上に開放感を感じていただけます。
この「使いやすく、美しい空間」こそが、長く住み続けるオーナー様にとって何よりも大切な『空間の質』であると私たちは考えています。

西側から見た賃貸併用RCマンション全景

浦和駅前で計画した賃貸併用RCマンション全体CG
まとめ
都市部で住宅取得を考える際、多くの方はタワーマンション購入を前提に検討します。
しかし、
・土地を取得する
・自宅を計画する
・賃貸部分を併設する
という方法によって、住まいと収益を両立できる可能性があります。
タワーマンション以外の選択肢や、駅前土地活用、賃貸併用住宅、RCマンション建築をご検討の方は、企画設計段階から十分な検討を行うことが重要です。

















