※本記事で紹介する模型は、埼玉県さいたま市浦和駅前で企画設計を行ったRC賃貸併用マンション計画のスタディ模型です。公開時点では未成プロジェクトであり、実際に建築された建物ではありません。
建築設計は「建てられるか」ではなく「最適か」を考える仕事です
設計の初期段階では、法律上建てられる最大ボリュームを把握することから始めます。
今回の計画でも、まず天空率を活用し、容積率をできる限り使い切る6階建て案を検討しました。
床面積だけを見れば、この案がもっとも有利です。
しかし、建物は床面積だけでは評価できません。
住みやすさ、構造、建築コスト、収益性、そして将来の暮らしまで含めて考える必要があります。

浦和駅前6階建てRCマンション計画 スタディ模型 北側ファサード
最初に検討したのは「最大ボリューム」の6階建て案でした
この模型は、天空率を利用して容積率をできるだけ使い切ることを目標に検討したスタディ模型です。
建物全体を6階建てとし、駅前立地の価値を最大限活かそうと考えました。
しかし、そのためには上階をセットバックさせる必要がありました。

浦和駅前6階建てRCマンション計画 スタディ模型 道路西側から見た外観
容積率を使い切ると、かえってプランが難しくなることがあります
6階部分をセットバックすると、ラーメン構造の柱位置も内側へ移動します。
すると、柱が建物の四隅ではなく室内側へ入り込むため、
・1階駐車場の計画
・賃貸住戸のプラン
・オーナー住戸の自由度
に大きな影響が出ることが分かりました。
床面積は増えても、使いやすい建物になるとは限らないのです。

4階オーナーフロア模型 ラーメン構造の柱位置を確認したスタディ
オーナーフロアは3層構成で検討しました
この案では、オーナー住戸を4階・5階・6階の3層構成として計画しました。
らせん階段によって上下階をつなぎ、立体的な住空間をつくることを目指しています。
一方で、毎日の暮らしを考えると、3層を移動する生活には負担もあります。
そのため最上階は子ども部屋とし、生活の中心は4階と5階になるよう計画していました。

5階オーナーフロア模型 光井戸と3層らせん階段を検討したスタディ
プライバシーを守るため、窓ではなく空から光を取り入れました
計画地の周囲には高層マンションがあります。
オーナー様からは、
「近隣から室内を見下ろされたくない」
というご要望がありました。
そこで、この6階建て案では外壁に大きな窓を設けるのではなく、
・トップライト
・光井戸
・吹抜け
を組み合わせ、空から光を取り込む住まいを提案しました。
周囲の視線を遮りながら、自然光を室内へ届けることを目指した計画です。

6階建て案6階オーナーフロア平面模型 吹抜けと光井戸を検討したスタディ

光井戸と吹抜けを設けた6階オーナーフロア模型
吹抜けを設けるほど、部屋は小さくなります
この計画では、トップライトや吹抜け、光井戸を設けたことで、室内環境は向上しました。
しかし、その分だけ居室として使える床面積は減少します。
さらに6階建ては各階がセットバックしているため、1フロアあたりの面積も5階建てより小さくなります。
限られた面積の中で、
・必要な部屋数
・収納
・水まわり
・動線
を確保することは非常に難しくなりました。
設計を進める中で、「建てられること」と「快適に暮らせること」は別であることが、より明確になっていったのです。

5階オーナーフロア平面模型 光井戸とダイニングの関係を検討したスタディ
だから最終的に5階建て壁式RC構造を選びました
この模型は、不採用になった案です。
しかし、この検討があったからこそ、最終案では5階建て壁式RC構造を採用する判断ができました。
・柱の少ない室内空間
・使いやすい住戸計画
・オーナーフロアの快適性
・建築コスト
・収益性
これらを総合的に比較した結果、「最大ボリューム」ではなく「最適な建物」を選んだのです。
まとめ
設計とは、法律上建てられる最大の建物を考える仕事ではありません。
その土地にとって、本当に価値のある建物は何かを考える仕事です。
今回の6階建て案は採用されませんでしたが、この模型による試行錯誤があったからこそ、現在の5階建て案へたどり着くことができました。
片岡直樹一級建築士事務所では、図面を描き始める前の企画設計を大切にしています。
土地条件や法規制だけでなく、収益性、暮らしやすさ、将来の使い方まで含め、その土地に合った最適な答えを、お客様と一緒に考えています。
関連記事
- ブログ⑤:駅前60坪でどこまで建つのか|RCマンションのボリューム検討
- ブログ③:賃貸併用住宅で失敗しない収益計画とは
- ブログ④:分譲マンションでは得られない天井高3mのリビング
- ブログ⑥:浦和駅徒歩1分の土地をどう活かすか

















