東京都江東区潮見で設計監理を担当している、鉄筋コンクリート造4階建て・コンクリート打放し仕上げのオフィスビル。着工から297日目、真夏の暑い日に、3階事務室・階段室側の壁と4階の床スラブのコンクリート打設を行いました。
打設そのものは無事に終えました。ですが、私が本当に気を配っていたのは、打った瞬間よりも、打ち終えた後のことです。

南側外観、コンクリートポンプ車が東側道路に着いている様子

真夏の打設当日。東側道路にポンプ車とミキサー車が並ぶ。
「乾燥すれば固まる」は誤解です
「コンクリートは乾いて固まる」と思われがちですが、これは正確ではありません。
固めているのは乾燥ではなく、セメントと水が結びつく「水和反応」という化学反応です。
コンクリートが必要としているのは、乾燥ではなく適切な水分です。
真夏の直射日光や強い風で表面の水分が急激に失われると、水和反応が十分に進まないまま固まってしまいます。
強度不足だけでなく、乾燥収縮によるひび割れの原因にもなります。
打放し仕上げでは、この初期段階の管理がそのまま仕上がりと寿命を左右します。
だから、打設直後にこそ水をまきました
この日は真夏の炎天下でした。特に気を配ったのは4階の床スラブです。
壁と違い水平面である床スラブは、日中ずっと直射日光を浴びます。
そこで、コンクリートが最も水分を必要とする打設直後のタイミングに、4階の床スラブへの散水を施工者と共有しました。
4階まで水を上げる作業は簡単ではありませんが、最も効果があるタイミングだと判断しています。

打設中の3階事務室。写真左側階段室壁がコンクリート打放し仕上げとなる型枠。
外周に面する壁は硬質ウレタンフォームt45の上ボードクロス仕上です。

4階床、中階段室から公園のある東側を見る

真夏の直射日光にさらされる4階の床スラブ。散水養生の対象となった面。
※この2枚は散水の様子そのものを写したものではなく、対象となった床面の写真です。
なお、コンクリートの密実性を確かめるため、型枠を木槌で叩いて音を確認する作業も、これまでの現場と同様に行いました。

化粧打放し仕上げの型枠を叩き、密実なコンクリートとなるよう確認する設計監理者の片岡。
打設直後の数時間に、何を優先したか
壁の仕上がりを美しく見せるための散水ではありません。目的は、日射にさらされる床スラブの強度を、計画通りに発現させることでした。壁への効果があるとしても、それはあくまで結果です。
現場には施工者が毎日入り、実際の作業を担っています。私が現場に立つのは週に一度ですが、その限られた機会の中で、何を優先して施工者と確認するかが監理者の判断です。
今回は床スラブの散水養生を優先事項として共有し、施工者に実行してもらいました。図面を描いて終わりにせず、コンクリートが固まっていく過程まで見据えて監理する。
その積み重ねが、建物の質をつくります。

3階事務室の東側開口から見える、隣接する公園の緑。
潮見のこのオフィスビルの設計については、下記のページでもご紹介しています。あわせてご覧ください。
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まとめ
この日の打設も、コンクリートという材料への理解と、判断の積み重ねの一つです。
自社ビルの設計では、装飾を足すことよりも、構造上必要のない部分を削ぎ落とすことに知恵を絞っています。
無駄のない構造は、それ自体が時代に流されない美しさとなり、企業の安定感や信頼性を静かに物語ります。
今回のオフィスビルも、建物の自重を抑えて基礎への負担を減らすことで、投資効率と構造美を両立させる設計としました。
無駄のない、企業の品格を映すコンクリート打放しの自社ビルをお考えの方は、ぜひご相談ください。
【本文中の内部リンク挿入位置(まとめ末尾、または関連記事欄)】
・前回記事:2階壁コンクリート打設
・3階壁鉄筋工事の記事(bss27)
・3階配筋検査の記事(bss28)
・型枠の品質管理の記事(bss29)
・4階床配筋検査の記事(bss30)
・未公開カット集「RC壁式構造が描く企業の品格」(完成後のギャラリー記事)
【技術コラム】4階への散水は、なぜ難しかったのか
4階の床スラブへの散水は、思っていた以上に難しい作業でした。理由は一つではありません。
まず、高さによる圧力損失です。水道直結式でホースを4階まで持ち上げると、その高さの分だけ水圧が失われます。
加えて、ホースをリールから長く伸ばすことによる摩擦での圧力損失も重なります。
高さとホースの長さ、この2つが合わさることで、4階の先端では水圧がかなり弱くなります。
誤解のないようお伝えしますが、これは「この地域の水道の水圧が低い」という話ではありません。
設計段階で水道局の調査により十分な水頭圧を確認した上で、増圧給水ポンプをコストカットできる水道直結式を採用しています。
今回の厳しさは、地域インフラの問題ではなく、4階まで伸ばすという物理的な条件による自然な現象です。
だからこそ、限られた水量・水圧をどこに使うかという判断が重要になります。
今回は打設直後に絞り、真夏の直射日光にさらされる4階の床スラブに重点を置いて散水しました。





















