住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
墨田区にあります妹島和世先生による設計のすみだ北斎美術館を見学してきました。職員の方の許可を頂き外観と一部の内部撮影をさせて頂きました。新建築 2017年1月号に発表された作品です。
緑町公園側外観
写真は人がいない一瞬をねらって撮りました。目の前が公園でたくさんの子供たちが遊具で遊んでいました。美術館+公園というベストマッチのロケーションです。なんでもない都会のちいさな緑町公園が、すみだ北斎美術館の影響で人の集まる公園になっています。すばらしい相乗効果です。にぎわいを作るのためには、建物本体だけでなく、連続する外部空間を作ることの重要性を勉強できました。
アルミパネルに見えない光輝合金発色の外装パネル
見学したときはわからなかったのですが、ステンレス2B仕上げのように見えましたが、色が違うので何の金属パネルなのかわかりませんでした。後でネットで知ったのですが、この外装パネルは、菊川工業のアルマイト仕上げによる光輝合金発色という特殊なアルマイト仕上げのようです。大判パネルのひずみのないようすから厚みは見た目4mmか5mmくらいあるように見えましたが小口が見えるので、3mmのようです。わたしも設計で一枚板の小庇などでアルミ3mm厚の設計をしたことがありますが、これだけ大きな外装パネルでできるとは大変興味深く勉強になりました。
菊川工業のアルマイト仕上げによる光輝合金発色のリンク→https://www.kikukawa.com/product/sumida-hokusai-museum/
菊川工業株式会社の外装技術がある、アーツ前橋を見学したことがあります。
アーツ前橋|住宅/ビル/マンション設計者の建もの探訪
東側外観
建物が途中で折れ、前にせり出したり後ろに倒れたりすることによるスカイラインの変化が大変興味深いです。
出隅のエッジがシャープな西側緑地側外観
留部のアルミパネルが折りではなく細目地納まりになっています。とてもシャープで美しいデザインディテールです。この建物のスカイラインの肝のディテールだと思います。3mm厚のアルミパネルでこれだけの大判で目地を通す下地のディテール設計が大変興味深いです。手がかりの切れ防止で目地部をさわってみましたが、しっかりべべリングがかかっていると思います。シャープさと安全面の両立が3mm厚で可能であることがとても勉強になります。
床とのパネル取り合いが、スラブ立ち上がりでパネルから面落ちになり、浮かした表現になっています。かっこいいです。
東側のスリット
アルミパネルのエッジがガラスカーテンウォールより少し勝たせてあるのがシャープに見える秘訣なんだと思いました。
講座室
斜めのガラスカーテンウォールに対して出入口は垂直になるので、なかまちテラスと妻面の三角パネルが同じ感じがします。柱の位置がガラスカーテンウォールから離れているのが違います。
建物の中央から十字に分割する通路
なかまちテラスと同じ構成だと思いました。このプランの良いところは、建物内側に入口 風除室を設けて、外観に風除室や庇がないため建物のプロポーションが美しく保てることだと思いました。勉強になります。
エントランスホール
正面が風除室で写真右手がミュージアムショップです。一部が2階まで吹き抜けているので広く感じます。層を構成するガラスカーテンウォールに沿った鉄骨梁の耐火被覆が工夫されて、梁が細く見えるので、自然な吹き抜けに感じさせる効果があると思いました。勉強になります。
4階展望ラウンジ
鉄骨梁のようなものが露出しています。私には、構造的にどういう流れでこうなっているのか見えにくく合理性が見て取れない中で、耐火被覆材で囲うわけでもなく、たぶん耐火塗料で急に露出していることに、違和感を感じました。
展望ラウンジのベンチシートの配列が室内を向いています。ちなみに、妹島先生のなかまちテラスでは、椅子は景色が眺められるようにエキスパンドメタルで覆われた窓を向いていました。
常設展の入口からホワイエの見返し
4階へはエントランスホールから2基のエレベーターで4階に上がり、階段で3階に降りて、3階から1階へは、昇りと同じエレベーターで1階に降りる順路です。建物規模が小さいくフロア数が多く、また、2階が閉架されているので、来館者が多過ぎるとき、エレベーター前では大混雑があります。エレベーターの移動を前提とすることのむずかしさがあります。勉強になります。
手すり壁が厚い鋼板製です。竪穴区画のシャッターレール支柱が階段吹き抜けの折端点に存在しています。
4階から3階に降りる螺旋階段
変則的な螺旋階段であることが見下げで分かります。
スリット窓 下端ディテール
壁面を照らすLED照明が床に仕込まれています。鋭角なガラス突き付け納まりでフラット面を設けて納められていました。
スリット窓 上端ディテール
目透かし部ブリーズライン空調になっているのでしょうか。スリット窓に角度がついているので天井部での納まりが大変なことになっています。大変な納まりでもグズグズにならず、とても施工がきれいです。超絶施工で凄過ぎます。
踏み面のペイント
階段の寸法は建築基準法施行令23条より回り階段の狭いほうから30センチの位置を測ります。このペイントは参考になります。
地下螺旋階段
ホールから住宅スケールの小さな螺旋階段を降りて地下につながります。
急激なスケールの変化のせいか、住宅では普通のレイアウトですが、螺旋階段が窮屈に感じます。貴重な空間体験で大変勉強になりました。
スリットがホールに入り込むことで外部が感じられます。
スリットのガラス越しの内部空間が見えます。
外部の緑がスリットの効果で内部にいても見通しが良いです。貴重な空間体験で勉強になります。
パネルとガラスの留め部ディテール
パネル勝ちでガラスからバッカーとシールが見えます。
床の空調スリットには面奥に金属の網があります。スリットは穴のように段差があります。
なかまちテラスとすみだ北斎美術館を比較して
妹島先生の設計による「なかまちテラス」を見学したことがあります。
なかまちテラス (小平市立仲町公民館・仲町図書館)|住宅/ビル/マンション設計者の建もの探訪
いろいろな方向からアクセスできるように、平面の中心に十字に通路をつくるプランということでこの二つの建物は似ていると思います。なかまちテラスは外壁がエキスパンドメタルでスカイラインがあいまいな表現で、すみだ北斎美術館はパネルのエッジがシャープです。ディテールは後からできたすみだ北斎美術館のほうが洗練されていると思います。
しかし、私は初期の方である なかまちテラスを見学したときに、建物を建てるための膨大なエネルギーが感じられて感動しました。
自分の設計に置き換えて考えてみますと、私は建築の意匠デザインの興味から東京芸術大学教授である北川原温先生の事務所で修行しました。耐震偽装事件を契機に発足した、設備設計一級建築士の勉強を通して設備に興味が広がり、現在は構造設計の勉強に興味があります。それは、意匠 設備 構造の高度な整合性と合理性のあるデザインに興味が移行してきているためです。
以前の設計より最新の設計の方が知見が優れたものになりますが、初期には初期の良さがあることを、自分の中で再発見でき、気づかされました。
大変勉強になりました。
すみだ北斎美術館 ご利用案内
開館情報
開館時間
9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日
上記以外にも臨時休館する場合がございます。
観覧料金
常設展
- 一般 400円(団体320円)
- 高校生、大学生、専門学校生、65歳以上 300円(団体240円)
観覧券は1階チケットうりばでお買い求めください。
常設展観覧料が無料となる方
- 未就学児童、小学生、中学生
- 墨田区内の高等学校に在学している高校生及び引率者が教育課程に基づいて観覧する場合(事前にご連絡をください。区外の高等学校に在学している高校生は有料となります。)
- 身体障がい者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方及びその付添いの方(付添いの方は当該手帳をお持ちの方1名につき1名まで。入館の際は障がい者手帳等のご提示をお願いいたします。)
- 幼稚園児、小・中学生及び保育所に入所する児童の引率者が教育上または保育上の目的のために観覧する場合(事前にご連絡をください。)
企画展
他館で特典が受けられます
■江戸東京博物館では
すみだ北斎美術館の常設展または企画展の半券、年間パスポートの提示
⇒常設展について団体割引料金でご観覧いただけます。
住所:墨田区横網1-4-1 TEL:03-3626-9974(9:00~17:30休館日除く)
※すみだ北斎美術館から両国駅方面徒歩5分
■郵政博物館では
すみだ北斎美術館の常設展または企画展の半券提示
⇒一回のみ無料で入館することができます。
【平成29年4月29日(土祝)~平成31年3月31日(日)まで】
※休館 10/4、10/25 11/15、11/29(不定休のため12月以降はHPでご確認ください)
※すみだ北斎美術館からバス約20分
①区内循環バス南部ルート「野見宿禰神社入り口」から「押上駅」下車
②都営バス[門33]都営両国駅前より亀戸駅前行「とうきょうスカイツリー駅入り口」下車
住所:墨田区押上1-1-2 東京スカイツリータウン・ソラマチ 9階 TEL:03-6240-4311
■すみだ水族館では
すみだ北斎美術館の常設展または企画展の半券、年間パスポートの提示
⇒入場券について団体割引料金でご観覧いただけます。
【平成29年11月23日(木)~平成31年3月31日(日)まで】
※常設展または企画展の半券に記載されている日付当日のみ有効
住所:〒131-0045 東京都墨田区押上一丁目1番2号
東京スカイツリータウン・ソラマチ5F・6F TEL03-5619-1821(9時~21時)
http://www.sumida-aquarium.com/access/index.html
東武スカイツリーライン「とうきょうスカイツリー」駅 すぐ
東武スカイツリーライン・東京メトロ半蔵門線・京成押上線・都営地下鉄浅草線「押上(スカイツリー前)」駅 すぐ
■刀剣博物館では
すみだ北斎美術館の常設展または企画展の半券の提示
⇒入場券の大人料金について1割引料金でご観覧いただけます。
【平成30年1月19日(金)~平成31年3月31日(日)まで】
※常設展または企画展の半券に記載されている日付当日のみ有効
住所:〒131-0015 東京都墨田区横綱一丁目12番9号
TEL03-6284-1000 ※月曜及び展示替期間は休館
https://www.touken.or.jp/museum/
JR総武線 両国駅西口から徒歩7分
都営地下鉄大江戸線 両国駅A1出口から徒歩5分
都営バス・墨田区内循環バス「旧安田庭園・同愛記念病院」から徒歩1分
すみだ北斎美術館での割引サービス
★江戸東京博物館の常設展または企画展の半券提示
⇒すみだ北斎美術館の常設展について団体割引料金でご覧いただけます。
★すみだトリフォニーホール主催・共催の対象公演の半券提示
⇒すみだ北斎美術館の常設展または企画展について団体割引料金でご覧いただけます。
★すみだ水族館の当日の入場券の半券または年間パスポートの提示
⇒すみだ北斎美術館の常設展について団体割引料金でご覧いただけます。
★刀剣博物館の当日の入場券の半券の提示
⇒すみだ北斎美術館の常設展について団体割引料金でご覧いただけます。
アクセス
- ・都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口より徒歩5分
- ・JR総武線「両国駅」東口より徒歩9分
- ・都営バス・墨田区内循環バス「都営両国駅前」より徒歩5分
- ・墨田区内循環バス「すみだ北斎美術館前(津軽家上屋敷跡)
停留所」からすぐ
所在地
TEL:03-5777-8600 ハローダイヤル(8:00-22:00)
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