老朽化した賃貸マンションの建て替えをご検討される際、多くのオーナー様からいただくご相談の中でも、特に多いのが「設計事務所に頼むと、ハウスメーカーや建設会社にすべて任せるのと何が違うのですか」というご質問です。
実際に弊社にご相談をいただく中でも、地域を問わず、同じような疑問からスタートするケースが少なくありません。
今回は、このご質問に対する弊社なりの答えをまとめました。

設計施工一括・一棟借り上げという選択肢
ハウスメーカーやゼネコン系の会社に相談すると、設計から施工、さらには完成後の賃貸募集・家賃保証(一棟借り上げ、いわゆるサブリース)までを、1つの会社にまとめて任せられるプランを提示されることがよくあります。初めて建て替えを経験されるオーナー様にとっては、窓口が1つで済み、何かあっても「とりあえずそこに聞けばいい」という安心感があるため、非常に選ばれやすい選択肢です。
ここで、あらかじめ知っておいていただきたい一般的な仕組みがあります。一棟借り上げによる家賃保証は、多くの場合、契約が2年ごとの更新制になっています。契約時に提示された家賃が、未来永劫そのまま保証され続けるわけではなく、更新のタイミングで見直しが入ることがある、というのは、賃貸経営に関わる中では比較的知られた話です。

設計と施工を分離するという選択肢
これに対して、弊社が行っているのは「設計」だけを担当する進め方です。
まず設計事務所として建物の設計図をつくり、その図面をもとに、複数の施工会社(通常3社程度)から競争見積もりを取っていただきます。
そのうえで、最も条件の良い施工会社を選び、オーナー様ご自身が施工会社と直接、工事契約を結びます。
工事中は、設計者である弊社が「工事監理者」として、設計図通りに建物がつくられているかを、施工会社側の日々の施工管理とは別の立場で確認していきます。
同じ会社が設計も施工も担当してしまうと、その会社が自分自身の工事を自分自身でチェックすることになり、外からは工事の中身が見えにくい、いわゆるブラックボックスになりがちです。
設計と施工を分離すると、複数の施工会社が競争して見積もりを出すため、工事金額に自然と競争原理が働きますし、工事監理者という第三者の目が入り続けることで、工事の質も保たれやすくなります。
完成後の賃貸募集や管理についても、施工会社とは別に、一般の仲介会社や管理会社、あるいは一棟借り上げの会社など、オーナー様のご希望に応じて選んでいただくことができます。

無料のプランと工事費の関係
設計施工一括の会社の多くは、設計プランや事業計画書、見積りを無料で提示しています。ただし、その費用がなくなるわけではありません。提案にかかった費用は、最終的に工事費に含めて回収されます。また、その会社で建てることが前提のため、工事費をほかの会社と比べる仕組みがありません。
当事務所が、お施主様の打ち合わせに同席した際の一例です。設計施工一括の会社から提示された坪単価は、当事務所が設計した同じ鉄筋コンクリート造の建物と比べて、坪あたり約30万円高くなっていました。延べ面積165坪の賃貸マンションに当てはめると、工事費の差は約4,950万円になります。これは、同じ規模の建物の設計監理費を上回る金額です。
建物の規模や仕様、時期によって差は変わりますが、比べるべきなのは入口の費用ではなく、設計料と工事費を合わせた総額です。当事務所では、ボリュームチェックや設計には費用をいただきますが、工事費は3〜5社の施工会社から相見積もりを取って比べます。
ご家族の中でも、考え方が分かれることがあります
実際にご相談をいただく中で多いのが、資産を引き継ぐご家族の間で、方針が分かれるケースです。
現在資産をお持ちの世代は、今後の人生設計を考えると、大きな借入れを伴う新築への建て替えにはハードルの高さを感じ、なるべく少ない借入れで済むリノベーションという選択肢を望まれる傾向があります。
一方で、これから長期にわたって資産を引き継いでいく世代は、より長期的な視点から新築への建て替えを望まれることが多く、ご家族の間で意見がまとまらない、というケースを、地域を問わず複数のご相談でお聞きしてきました。
なお、融資の条件や進め方は、ご家族の状況や金融機関によって大きく異なります。この点については、金融機関や税理士など、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

「まかせてしまえば楽」の先にあるもの
一括で任せるプランは、たしかに手間がかかりません。
しかし、賃貸経営はオーナー様ご自身の資産を長期にわたって運用していく事業でもあります。
任せきりにするほど、その分の中間コストは家賃収入や資産価値から差し引かれていくことにもなります。
設計と施工を分ける、というのは、多少の手間と引き換えに、ご自身とご家族の資産を守るための選択でもあります。
建て替えを検討し始めた早い段階で、こうした選択肢があることを知っていただくことが、なにより大切だと考えています。
賃貸マンションの建て替え・設計監理についてのご相談は、お問い合わせページより承っております。設計監理費用の目安はこちらでご確認いただけます。完成後の賃貸経営に関わる不動産会社の役割については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

















