
歩道の切り下げ・ガードパイプの撤去についてよくあるご質問
自分で工事や申請をすることはできますか
歩道は区や都、国が管理する道路で、建物の敷地とは扱いが異なります。そのため、区の許可を受けずに歩道の切り下げやガードパイプの撤去を行うことはできません。
また、許可を受けるためには、次のような準備と手続きが必要になります。
・区の定める仕様に沿った、平面図や道路の断面図などの申請図面の作成
・申請の前に、区役所と管轄の警察署の両方へ事前相談を行い、切り下げられる範囲を確認すること
・区の指定業者による工事と、工程別の写真を添えた完了届の提出
このように専門的な図面の作成や協議が必要になるため、ご自身だけで進めるのは難しい手続きです。建物を新築される場合は、その建物を設計する設計事務所が窓口となって進めることができます。今回の現場でも、設計事務所が窓口となって手続きを進め、工事は建物の施工を担う工務店を通じて区の指定業者に依頼しました。
期間はどれくらいかかりますか
今回は、ご依頼をいただいてから工事が完了するまで、約5か月かかりました。そのうち、事前相談から工事の着手までが約3か月です。工事そのものは数日で終わります。
時間を要するのは、区役所と管轄の警察署との協議と申請の部分です。くわしい理由は、記事の後半でご説明します。
潮見一丁目のオフィスビルで行った歩道切り下げ
江東区潮見一丁目で、既存の木造2階建て住宅を建て替え、鉄筋コンクリート造4階建てのオフィスビルを設計・工事監理しました。1階は倉庫として計画し、道路に面して大きなシャッターの開口部を設けています。
このシャッターの前の歩道には段差があり、さらに歩道と車道を分けるガードレール(実際にはガードパイプ)が設置されていました。このままでは車両が敷地に出入りできないため、自費工事として歩道の切り下げとガードパイプの撤去を行いました。
歩道の切り下げとは
歩道は、歩行者が安全に通行するための道路の一部です。舗装も、その下の路盤も、人が歩くことを前提につくられています。
敷地に車両が出入りする場合、車は歩道を横切ることになります。そのため、歩道の段差を低くし、車両の重さに耐えられるよう路盤から舗装までをつくり直す必要があります。これが「歩道の切り下げ」と呼ばれる工事です。
工事は、道路法第24条にもとづき、道路管理者の承認を受けてから行います。工事の費用は申請者のご負担となります。東京都や各区では、この工事を「自費工事」または「承認工事」と呼んでいます。
ガードレール(ガードパイプ)の撤去
歩道と車道を分ける防護柵は、一般に「ガードレール」と呼ばれています。今回の敷地の前にあったのは、パイプ状の防護柵であるガードパイプでした。シャッターの開口部の正面にあたるため、歩道を切り下げても、ガードパイプが残っていると車両が通れません。
ガードパイプは道路の付属物で、区の所有物です。そのため、歩道の切り下げとあわせて、ガードパイプの撤去についても区と協議しました。撤去したガードパイプは区へ返却しています。
申請すれば必ずできる工事というわけではありません
歩道の切り下げとガードパイプの撤去は、申請すれば必ず認められるというものではありません。許可を判断するのは道路を管理する区で、その際に、交通の安全を管理する管轄の警察署の意見が求められます。
■区の判断
歩道は、もともと人が歩くことを想定してつくられています。車両が乗り入れるためには路盤ごとつくり直す必要があるため、場所によっては車両の乗り入れが認められない場合があります。
■管轄の警察署の意見
交差点からの距離によっては、管轄の警察署の意見により、歩道の切り下げが認められない場合があります。交差点の近くで車両が歩道を横切ると、歩行者や他の車両の安全に影響するためです。
このように、切り下げができる範囲は、区の判断と管轄の警察署の意見によって決まります。そのため、図面を描き始める前に区役所と管轄の警察署の両方へ出向き、切り下げが認められる範囲を確認しておくことが大切です。
隅切り部分は切り下げの対象外でした
隅切りとは、交差点の角を斜めや曲線状に切り取った部分のことです。見通しを確保し、車両が曲がりやすくするために設けられています。
今回の敷地は交差点の角に面しており、この隅切りの部分の歩道は、車両の乗り入れが認められていない場所でした。そのため、隅切りを含めた範囲での切り下げは行えません。今回の建物は、もともと隅切り部分からの車両の出入りを必要としない計画でしたので、この部分は申請の範囲から外しています。
切り下げができる範囲は、隅切りや交差点との位置関係によって限られます。その範囲の中で、シャッターの位置や車両の出入りに設計上の問題がないかを事前に確認し、切り下げの範囲を設計しました。
申請から工事完了までの流れ
今回の手続きは、次の順番で進めました。
手順1:ラフスケッチを持って、区役所と管轄の警察署で事前相談
正式な図面を描く前に、計画の内容をまとめたラフスケッチを持って、江東区土木部道路課の道路占用係と、管轄の警察署の両方へ伺いました。
区役所では、切り下げができる範囲に加え、舗装の仕様、ガードパイプの撤去、路盤の種類などについて協議しました。管轄の警察署では、交差点からの距離や歩行者の動線をふまえて、切り下げが認められる見込みがあるかを確認しました。
手順2:申請図面の作成
区役所と管轄の警察署での事前相談の内容をもとに、区の仕様に沿って平面図や道路の断面図を作成しました。
手順3:工事費の見積もりとお施主様のご承認
図面の作成と並行して、建物本体の施工を担う工務店から見積もりを取りました。工事内容と費用を確定させ、お施主様にご承認いただきました。
手順4:江東区での仮受付
図面と必要書類を区の道路占用係へ提出し、仮受付を受けました。この段階で、図面の修正のご指示をいただきます。
手順5:管轄の警察署での意見照会
修正した図面を持って、再び管轄の警察署へ伺いました。図面の内容をご説明し、意見照会の手続きを行いました。
手順6:管轄の警察署で意見書を受け取る
後日、意見照会に対する意見書を受け取るため、もう一度管轄の警察署へ伺いました。
手順7:江東区での本受付
管轄の警察署の意見書を添えて、区の道路占用係へ申請書類を提出し、本受付となりました。
手順8:許可証の交付
後日、区から許可番号が記された許可証が交付されました。
手順9:自費工事着手届の提出
工事に着手する前に、設計者である当事務所が、区へ「自費工事着手届」を提出しました。
手順10:指定業者による工事
工事は、江東区の定める仕様に従って行います。江東区では、道路の工事は区の指定業者が行うことになっています。
今回は、建物本体の施工を担う工務店が、区の指定業者のリストから道路工事の専門業者を選び、下請けとして依頼しました。指定業者以外の会社から相見積もりを取られた場合でも、その会社に工事をお任せすることはできない決まりですので、ご注意ください。
手順11:自費工事完了届の提出
工事が終わりましたら、「自費工事完了届」を、道路課とは別の場所にある江東区の道路事務所(施設保全課 道路保全係)へ持参して提出し、手続きが完了します。
完了届には、工程別の写真を添付します。今回は、写真の撮影を次のように分担しました。
・申請や完了届の書類に添える写真:設計事務所が撮影
・工事の各工程の写真:施工した指定業者が撮影
工事の各工程の写真は、道路事務所が定める内容と手順に沿って撮影する必要があります。工事が終わった後では撮り直しができないため、道路事務所が求める工事写真の内容を理解している区の指定業者が工事を担当します。
工事に時間がかかります
歩道の段差を少し削るだけの工事と思われることも多いのですが、実際には手続きにも工事の内容にも手間がかかります。
表面だけでなく、路盤から入れ替えます
歩道の舗装は、人が歩く重さを前提につくられています。車両が乗り入れられるようにするには、表面のアスファルトやインターロッキングブロックを張り替えるだけでは足りず、その下で舗装を支えている路盤まですべて入れ替える必要があります。

【道路断面図・正面図】

【改修前の歩道断面図】

【改修後の歩道断面図】
※図面は江東区の仕様図の一部を掲載しています。
縁石と排水溝が一体の製品の場合は、工事の範囲が広がります
歩道と車道の境目には、L型側溝(L字溝)が設けられていることがあり、その一部に雨水を流す排水溝があります。
排水溝が縁石と別の部材として分かれている場合は、縁石を交換するだけで切り下げを行うことができます。今回の現場もこの形で、排水溝には手を加えず、縁石の交換で切り下げを行いました。
一方で、縁石と排水溝が一体に成形された、コンクリートの既製品が使われている場合もあります。その場合は、排水溝の部分も含めて工事を行う必要があるため、工事の範囲が広がり、そのぶん費用もかかります。
区役所と管轄の警察署を行き来して手続きを進めます
今回は、区の道路占用係で仮受付を受け、図面を修正した後、管轄の警察署で意見照会を行いました。その後、警察署から意見書を受け取り、再び区の道路占用係へ戻って本受付を行っています。工事完了後には、道路課とは別の場所にある道路事務所へ完了届を提出しました。一つの手続きが終わってから次の手続きに進むため、それぞれの窓口へ何度も伺うことになります。
今回は、事前相談から工事の着手までに約3か月、ご依頼から完了まで全体で約5か月を要しました。建物の竣工に合わせて車両が出入りできるようにするには、建物の工事と並行して、早めに道路側の手続きを始めることが大切です。
車両の出入口は、計画の初期に確認します
歩道を切り下げられる範囲は、区の判断と管轄の警察署の意見によって決まります。建物の計画が進んでから認められないことが分かると、シャッターや出入口の位置の見直しが必要になることがあります。
今回は、図面を描く前にラフスケッチで区役所と管轄の警察署にご相談し、切り下げられる範囲を確認したうえで、車両の出入口を設計しました。
RC造のオフィスビル、コンクリート打ち放しの建築をご検討の方は、潮見オフィスビルの設計事例ページや未公開カット集、オフィスビルの実績一覧もあわせてご覧ください。
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自社ビルは、賃貸で入居するオフィスと違い、数十年にわたって経営者ご自身が使い続ける建物です。
テナントであれば数年で移転や規模変更もできますが、自社ビルはそうはいきません。
だからこそ、今の事業規模だけでなく、その先何十年もの使い方まで見据えて構造を考える必要があります。
自社ビルの設計では、将来にわたって使い続けることを前提に、構造上必要のない部分を削ぎ落とし、合理性のある建物とすることを重視しています。

















