住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。
長野県長野市にあります おやきファーム OYAKI FARM — おやき 長野いろは堂です。
「おやき」の老舗「いろは堂」のドライブイン(物販店舗) 食品加工工場です。
職員の方の許可を頂いた範囲で撮影させて頂きました。
設計は、遠野未来先生 です。
新建築 2022年10月号に発表されています。
とても人気があります。
エントランス 風除室
現場の工事残土を使った版築壁の円形の風除室
風除室は、2枚の版築壁の間に木造フレームと空気層を設けたダブルスキンとなっているそうです。
5m近い高さのある版築壁は、厚さ約170~220mmで、鉛直荷重には自立できる耐力があり、地震時の水平力には木造フレームで抵抗しているそうです。水平力の分担率を木造フレーム80%、土壁20%の場合にも剥落しない仕様となっています。
土に混ぜるのは、石と少量の石灰や稲藁などの凝固材を混ぜたものでできていますが、最近ではセメントを混ぜてコンクリートに近いものとなってきていることが多いようです。
版築壁の勉強をさせて頂きました。
版築壁とは
壁や塀などをつくるときに、土をもちいて型枠などに強く突き固めて高い壁をつくる伝統工法です。
1階ホール 左手は出入口 右側は直売所とカフェ
柱間最大スパンは約9m
床:土入モルタル全ゴテt=50mm 防塵塗装仕上(アクアカラー) 基礎スラブt=150mm モルタル金ゴテ仕上げ 防温シートt=0.15mm 碎石 0-40 t=150mm
2階スカイデッキへと続く階段
土台:杉180×150 角座金:54✕54mm t=6.0✕2枚 (Zマーク金物)埋め木処理 引きボルト全ネジボルトM16 【ボルト孔φ18)
階段踏板:ヒノキt=60mm
1階ホール:直売所とカフェ
奥側は、おやきづくりの体験ができるテストキッチン。カフェの右奥は見学コーナーです。
燃えしろ設計の柱(150x330mm)と下面を現した梁(150✕330mm)
柱から登り梁への構成
柱+合わせ方杖接合金物補強: 合せ柱にほぞ差し+ボルトM12座金40mm角
合せ方杖:45分準耐火構造 燃え代設計 45mmスギ製材 2-150x210mm 有効断面: スギ製材 2-105×120mm
合せ方杖+方杖接合金物補強:方杖にホゾ差し(2枚ホゾ)+ボルトM12座金40mm角
方杖:45分準耐火構造 燃え代設計 45mmスギ製材 150x180mm 有効断面: スギ製材 60x90mm
登り梁+方杖接合金物補強:登り梁ホゾ差し
登り梁:ヒノキ燃え代設計 150x330mm
天井:強化PBt=12.5mm ジョイント部寒冷紗EP
2階 スカイデッキ 右手前の部分は階段室
2階 正面サッシは1階カフェの吹抜けのサイドライト
2階 スカイデッキ 正面は階段室への廊下
ダブルスキン版築壁
耐力盤 :柱スギ2・150✕330mm 構造用合板t=12mm 両面真壁納まり 壁倍率 3.3×2=6.6倍
版築外壁(外周):版築壁 W=175~226mm 左官荒塗りt=2mm ホウキ目 構造用合板t=12mm ガルバリウム鋼板t=0.35mm PB t=12.5mm
版築 内壁(内周・外周):版築壁 w= 183~226mm 左官塗りt=2mm ホウキ目 構造用合板t=12mm PBt=15mm
タテ丸竹 :φ=40@w=303mm 乾燥防虫処理材 シュロ縄巻き@30mm 基礎:アンカーM12 L=450mmに固定 (竹節2か所貫通)
ヨコ割竹 :t=5mm h40@h455 乾燥防虫処理材 シュロ縄巻き@30mm
タテ竹と木下地緊結:タテ丸竹にSUS番線 t=1mmダブルを結束 木下地にSUSビス φ=6mm L=36mm以上 @h455mmで緊結
木組 垂木:杉60×120@455 表し 出桁:杉150×240@1500 母屋:杉120*150@909
軒桁・無目:45分準耐火構造 燃え代設計 スギ製材 150×330mm 有効断面: 杉製材 105x240mm
合せ柱: 45分準耐火構造 燃え代設計45mm 杉 2-150x330mm 有効断面:杉製材2-210×240mm
外壁:複層LOW-E透明ガラスt-28mm FL8+A12+LOW-E8 (< H5,000)
ガラス枠: 耳付太鼓柱: スギW=120mm×D末口300mm
柱が地面から浮いているように見えるのは、ガラス枠の耳付き太鼓柱です。
下部:水切:ガルパリウム 銅板t=0.35 樹脂系モルタル仕上げ t=-8mm
断熱材:スタイロエースⅡA t=50mm(λ=0.028) (A種押出法ポリスチレンフォーム3種) 塗膜防水t=2mm
盛士の上芝貼り 雨落部:小布施砕石
長野インターに近く、他地域への玄関口としての立地特性から、ドライブインとしても利用されるそうです。
屋根:ガルバリウム鋼板t=0.4mm ゴムアスファルトルーフィング
軒天:野地板:J-Panel t=30mm 木組み表し
面戸:杉t=45mm
千曲川土手から北側外観の眺め
背景の山並みは飛驒山脈です。
材種:柱・梁:スギ、一部化粧ヒノキ 耐力型:スギ化粧筋交 床板:スギ 土台:ヒノキ 構造用合板:針葉樹構造用合板 下地材・造作材:スギ
構法(工法):木造在来構法
敷地条件:市街化調整区域 第二種低層住居専用地域に準ずる地域
用途:食品加工工場・ドライブイン(物販店舗) 耐火性能:45分イ準耐火建築物
この建物は、市街化調整区域に合法に建設されています。市街化調整区域は、建物を建てられない規制地域です。
大変興味深く勉強させて頂きました。
おやきアイスサンド(430円)晴天のスカイデッキで食べました。
おいしかったです。
おやきファーム BY いろは堂
所在地: 〒388-8019 長野県長野市篠ノ井杵淵7−1
電話番号: 026-214-0410
URL:https://irohado.com/pages/oyaki-farm
上記は、2023年10月の情報です。詳しくはおやきファームのホームページをご覧ください。