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森の広場のファサード面のプラン構成は、スチューデントオフィスと呼ぶ学生や教員が自由に使える部屋を積層させたものとしていることを特徴としているようです。立面に表れるスチューデントオフィスの活動を見せるデザインコンセプトがとても勉強になります。
住宅/ビル/マンションのデザイン建築設計事務所をしている片岡直樹が向学のために名建築を訪ねるシリーズです。神奈川県横浜市金沢区にあります山本理顕先生設計の横浜市立大学YCUスクエアを見学してきました。職員の方の許可を頂き外観と1階のみ内部撮影をさせて頂きました。GA japan 141号に発表された作品です。
薄いパネルの庇ルーバーが見えます。
プレゼンテーションギャラリーと呼ばれる大きな吹抜け空間があります。ルーバー付きトップライト、電車線路側壁面が四角穴パンチングスクリーン付きのガラス面になっていて、さらに森の広場側も窓面なので明るい吹き抜け空間となっていました。
吹き抜けの全面をトップライトにすると、壁面採光の3倍の面積に相当するので、トップライトの開け過ぎとなりやすいので、設計者であれば誰でも全面をトップライトにするのは躊躇(ちゅうちょ)すると思います。ルーバーやスクリーンがあることと廊下袖壁がパネル壁であることから日射がある程度遮られているので、程よい明るさになっていると感じられました。大変勉強になります。
休日に見学したので学生のいない静かな状態でしたが、線路からの騒音は聞こえはしますが気にはなりませんでした。貴重な空間体験で大変勉強になりました。
調べていないのでわかりませんが、トップライトは可動ルーバーなのかもしれません。線路側壁面では、四角穴パンチングスクリーン越しに線路側の景色も見えて、採光と視線を高度にコントロールしているのだと思いました。
普通これだけ採光が確保されるのであれば、線路側の外壁は騒音が気になるので景色を捨てて開口の無い遮音壁とすると思います。そこにあえてガラスカーテンウォールと四角穴パンチングスクリーンを設けていることが、勉強になります。
鋼板は結構な厚みがあり強度のあるスクリーンとなっていました。クリップ状の特殊なつかみ金物になっているようです。四角穴は有孔吸音板のヘルムホルツ共鳴器の効果をねらっているのでしょうか。
ヘルムホルツ共鳴器とは、小さい穴と大きな体積を持つ背後にある空気層が口の小さい大きなビンのような共鳴器になることで、音が穴に入るとその共鳴する帯域で減衰すると言う仕組みです。この効果は低音域の周波数帯で効果があるとされています。
穴が大きすぎるように思いますし、線路からの騒音はどちらかというと高音域だと思うので吸音効果を目的とした穴とは違うのかもしれません。デザイン上の視線のコントロールとしてこの大きさにしているのかもしれません。しかし、強度のある板状のスクリーンは音があたって、板をゆらすことによる減衰の効果があるので非常に有効なのだと思います。
スクリーンの裏面に一部樋が隠されています。
薄い階段手摺壁と段裏が一体となった階段とサインのデザインがかっこいいです。
跳ねだし部の庇なので軽量化することに合理性があり薄いルーバー状にしているのかもしれませんが、森の広場側と校門からの主動線からのファサードの見上げということで、この外壁面は外観の一番の見せ場になっているようです。薄板のディテールデザインはチープな印象になりやすく難しいことが勉強になります。
構造的に薄いデザインを標榜されているのだとおもいます。薄板パネルの口が開いてしまっています。留部のパネルの勝ち負けなども含めて、薄板パネルの突合せディテール設計は、日本建築学会賞受賞歴が2度もある高名な先生でも難しいのだと思いました。勉強させて頂きました。
屋外階段手摺が躯体に後付けで取り付けやすいようにベースとしてフラットバーで縁取りされて立ち上がりがモルタル調整が可能な仕様になっています。施工性を優先したディテールのようです。
サッシ室内側床面にグレーチングがあります。ペリメーターゾーン空調のための床吹出口でしょうか。省エネになる高度な空調コントロールがされているようです。
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片岡直樹建築設備設計一級建築士事務所
代表 片岡直樹
設備設計一級建築士
一級建築士
管理建築士
読売理工医療福祉専門学校非常勤講師
2014グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス9の設計監理にて受賞致しました。
2008グッドデザイン賞をデザイナーズマンション プラザレジデンス8の設計監理にて受賞致しました。
建築雑誌KJ2016年12月号にデザイナーズマンション3作品が掲載されました。
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