着工から308日が経過した2025年9月8日、江東区潮見で建設中のRC造4階建てオフィスビルは、4階の壁の型枠工事を進めています。今回の記事で、このプロジェクトにおける型枠工事の現場レポートは最後となります。
次回は、屋上床の配筋検査の様子をお伝えする予定です。

東側立面から見た建物全体
建物を東側の立面から見た状態です。4階までの躯体工事の進捗が、建物全体のシルエットとして確認できます。

南側外観
南側から見た外観です。隣接する公園の樹木よりも建物が高く立ち上がっている状態を確認できます。

北東側外観
街路樹のある歩道から見た、北東側の外観です。
「返す」とは何か――型枠を閉じる前にしかできない確認
型枠工事は、外壁側の型枠を建て込み、その内側で鉄筋を組み、最後に反対側(内壁側)の型枠を建て込んで閉じる、という手順で進みます。
この最後に型枠を閉じる作業を、現場では「返す」と呼びます。

4階、梁・スラブ・壁の型枠
4階で、東側の開口部を右手に見ながら、梁・スラブ・壁の型枠が組まれている状態です。

4階、1400角フィックス窓の開口部
4階の外壁で、1400mm角のフィックス窓の開口部まわりと、外壁型枠の施工状況です。
一度返してしまうと、壁の中の鉄筋や、この後お話しする配管・配線用のスリーブなど、内部に組み込んだものは二度と目で確認できなくなります。
つまり「返す直前」が、外からは見えなくなる部分を確認できる最後のタイミングになります。
非常駐監理では、現場のすべての工程に毎回立ち会えるわけではありません。
ただし、この「返す」タイミングについては、あらかじめ施工管理者と日程をすり合わせ、確認する機会を持てるよう調整しています。
北側斜線制限で斜めになった耐力壁と、エアコン室外機置場
4階の型枠工事には、特徴的な部分があります。北側の外壁は建物の構造を支える耐力壁ですが、北側斜線制限という法規制のため、垂直ではなく斜めになっています。

4階、北側バルコニー開口部
4階で、北側のバルコニー開口部を正面に見た型枠の施工状況です。斜めになった耐力壁と、その下部の型枠を確認できます。
北側斜線制限とは、真北方向から見た隣地の日照や採光を確保するために、建物の北側の高さを制限する規定です。
今回の建物には、このうち第3種高度斜線という規定が適用されており、高さ10メートルの地点から1対1.25の勾配で制限が始まります。
この制限がちょうど4階の床から屋上までの高さにかかってくるため、4階の床から屋上まで、耐力壁が一枚の壁として斜めに倒れる形になっています。
4階の壁の途中から折れ曲がっているわけではありません。
この壁は間仕切りのような雑壁ではなく、上下の梁に取り付いた耐力壁です。
そのため、4階床の梁と屋上の梁を一直線に結ぶ形で壁を斜めにする必要があり、4階の床から屋上までが一枚の斜めの壁になっています。
ここで、単に壁を斜めにするだけで終わらせず、その斜めになった部分を4階のエアコン室外機置場として使える設備バルコニーに転用しています。
法規制による制約を、そのまま無駄な空間にせず、実際に使える機能に置き換えた設計です。
もう一つ、この斜め壁ならではの工夫があります。
壁が斜めになっていると、配管や配線を通すためのスリーブ(貫通穴)をきれいに設けることが難しくなります。
そこでこのバルコニーでは、斜め壁の一部にある三角形の、垂直に立ち上がった壁面だけに、エアコン用のスリーブと換気用のスリーブをまとめて設けています。
こうした埋め込み物の位置は、まさに「返す」前でなければ確認できない部分です。
斜めの壁という特殊な形状のなかで、スリーブの位置が図面通りに納まっているかを、型枠を閉じる前に見ておく必要がありました。
同じように斜線制限や変形敷地に悩まれているオーナー様がいらっしゃれば、実際にどのような建物になったか、潮見オフィスビルの設計事例ページでご覧いただけます。
4階天井の仕上げについて
4階は最上階にあたり、屋根の部分は内断熱とする設計です。
内断熱にすると断熱材である厚さ60ミリの硬質ウレタンフォームがそのまま天井面に見えてしまうため、これを隠す目的で、天井は打ち放し仕上げではなく、コストを強く意識した安価なジプトン仕上げとする予定です。
資材価格の高騰と、型枠でのコスト調整
設計図書では通常、コンクリート打ち放し化粧仕上げは新品の型枠でつくることが前提になっています。
しかし実際に見積りを取ると、工事費が予算を超えることがほとんどで、そこから減額を図る過程で、型枠がこうした形で犠牲になることがあります。
この建物のコンクリート打ち放し化粧仕上げも、再生した型枠を補修しながら使う方法を採用しており、コンクリート面に再生型枠特有の傷が入ることを、あらかじめ前提としています。
型枠の板の使い方にも、同じような事情があります。
本来は目地の見え方を考えて、サブロク板(900×1800mm)を横使いにする予定でしたが、実際には打ち放し用の大判合板の価格が非常に高くなっているため、ニロク板(600×1800mm)を縦使いにする形になっています。
新品ではなく再生型枠を補修して使うのは、本来の正しいやり方ではありません。
ただ、コンクリート型枠材の価格が近年大きく値上がりしているだけでなく、急激な物価高で工事費の予算目標を変えられない事情から、こうした対応がやむを得ず続いているのが、現在の打ち放し工事の実情です。
型枠を外した直後に、ガラスのように滑らかで美しい打ち放し面ができることもあります。
しかしその場合でも、そのまま仕上げとせず、薄いモルタルで表面を化粧し、その上から撥水性のコーティング材を塗ることが多くあります。
理由は、そのほうが均一な仕上がりに見えるからです。
実際の現場感覚として、素のままの打ち放し面よりも、この化粧仕上げのほうを施主様が好まれる傾向があります。
1階から3階までの型枠脱型後の状況
4階で型枠工事が進む一方、下の階ではすでに型枠を外した状態を確認できます。

2階事務室、東側開口部
2階の型枠を脱型した後、事務室内から東側の開口部を見た状態です。
この面は外周壁に面する部分のため、この上から断熱・ボード下地・クロス仕上げが施されます。

2階事務室、北側壁面
同じく2階の事務室で、北側の壁面を正面から見た状態です。
写真左側の階段室の壁だけが、完成時にコンクリート打ち放し化粧仕上げとして残ります。
正面と右側の壁は外壁に面する部分のため、断熱・ボード下地・クロス仕上げとなります。

2階事務室、東側開口部
2階の事務室から東側の開口部を見た状態です。開口部の外側に、設備バルコニーが見えています。

1階倉庫、東側シャッター開口部
1階の型枠を脱型した後、倉庫部分で東側のシャッター開口部を正面から見た状態です。
開口部の高さは2.7メートルです。

1階倉庫から見た南側玄関ポーチ
1階の倉庫から、南側の玄関ポーチ部分を見た状態です。

3階事務室、北側男子ロッカースペース
3階の型枠を脱型した後、事務室から北側の男子ロッカースペースを見た状態です。
現在はコンクリートの躯体がそのまま見えていますが、この後、断熱・ボード下地・クロス仕上げが施され、現在とは異なる仕上がりになります。
写真左手の壁が階段室で、コンクリート化粧打ち放し仕上となります。
これらはいずれも、今回の4階と同じ「外壁側型枠→配筋→返し」という手順で施工された部分です。
潮見のこのオフィスビルの設計については、下記のページでもご紹介しています。あわせてご覧ください。
まとめ
4階の壁・返しの型枠工事をもって、このプロジェクトの型枠工事に関する現場レポートは今回で終わりです。
次回は、屋上床の配筋検査についてお伝えする予定です。
斜線制限のような法規制約を設備スペースに転用する判断、型枠を閉じる前の最後の確認、資材価格の現実を踏まえたコスト調整など、コンクリート打ち放しの建物には、図面だけでは伝わらない現場での判断があります。
RC造のオフィスビルや賃貸マンション、店舗、コンクリート打ち放しの建築をご検討の方は、潮見オフィスビルの設計事例ページや未公開カット集、オフィスビルの実績一覧もあわせてご覧ください。
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自社ビルの設計では、装飾を足すことよりも、構造上必要のない部分を削ぎ落とすことに知恵を絞っています。
無駄のない構造は、それ自体が時代に流されない美しさとなり、企業の安定感や信頼性を静かに物語ります。
今回のオフィスビルも、建物の自重を抑えて基礎への負担を減らすことで、投資効率と構造美を両立させる設計としました。
無駄のない、企業の品格を映すコンクリート打放しの自社ビルをお考えの方は、ぜひご相談ください。




















