
自社ビルの建設において、外観やエントランスといった「表の顔」にこだわることは企業のブランディングとして重要です。
しかし、事業としての投資効率を決定づけるのは、実は「バックヤード(裏側)」の設計にあります。
限られた予算と敷地面積の中で、いかに無駄な施工手間を省き、有効な床面積を広げ、将来のメンテナンス費用を抑えるか。
本記事では、メインの事例ページではお見せしていないバックヤード(水回り、設備スペース、倉庫など)の写真を公開します。
設計者である一級建築士・片岡直樹が自ら撮影した現場の記録から、RC壁式構造における「建築費最適化の裏側」を包み隠さずお伝えします。
「このオフィスビルの全体像や詳細なプロジェクト解説は、こちらのメインページをご覧ください」
デッドスペースを利益に変える、階段下の機能的活用

1階倉庫に設けた階段下トイレ。
倉庫エリアは断熱材を使用していないため、外気と接する壁面はあえてコンクリート打放し仕上げを採用。
階段下の傾斜を活かした空間設計で、無駄な面積を省いています。
過度な造作を排し、信頼性の高い既製品を活かすコスト最適化

コスト削減を第一に考え、あえて造作工事をせず既製品の洗面ユニットを採用しました。
現場での組み立てや施工の手間を省くことで、バックヤードにおける建築費用を合理的に圧縮しています。
用途に合わせた素材の取捨選択による、メリハリのある予算配分

シンプルで機能的な階段下トイレの別アングル。
コストを徹底的に削減しつつも、コンクリート壁式構造ならではの無骨な質感が、倉庫スペースのインダストリアルな雰囲気に馴染んでいます。
現場の施工手間(人件費)を抑える、合理的なユニット採用

手洗い場として必要十分な機能を持つ既製品ユニット。
見栄えよりも「実用性とコストダウン」を最優先とし、限られた予算のなかで事業計画の全体的な投資効率を高める判断をしています。
コンクリートの段差造作を省く、配管スペースの賢い確保術

既製品のユニットシャワーと脱衣室。
大工工事で脱衣室の床を150mm上げ、その床下を配管スペースとして利用しています。
コンクリートの床スラブ自体に段差を設ける手間を省き、コスト削減を実現しました。
床面積を最大化し、建築費を抑える「二重床を避けた」設備計画

2階の洗面および洗濯室。
階段室上部のデッドスペースを有効利用しているため、洗濯機パンの位置が床より一段上がっています。
限られたフロア面積の中で、必要な機能を無駄なくパズルのように配置しました。
2階の水回り(トイレ・洗面・洗濯室)では、給排水の配管を床下ではなく、壁から直接外部へと逃がすルートを採用しています。
これにより、室内に配管用の専用スペース(PS)を作る必要がなくなり、限られた床面積を無駄なく有効活用できます。
さらに、配管を通すための複雑な「二重床」や、コンクリートに段差を設ける施工手間も省けるため、躯体をシンプルに保ちながら論理的なコストダウンを実現しています。
将来の修繕リスクを見据えた、メンテナンスのしやすい設備配置

清潔感のある2階男子トイレ。
装飾を排したミニマルな設計は、建築費の削減だけでなく、オフィスビルとして日々の清掃やメンテナンスのしやすさといったランニングコストの低減にも寄与します。
設備スペースと更衣室の統合による、執務エリアの最大化

3階の女子ロッカー室。
この空間は、縦方向に電気幹線が通る「盤室」としての機能も兼ねています。
設備用スペースと更衣室を統合することで、執務エリアを少しでも広く確保するための工夫です。
イニシャルとランニングコストの両面を守る天井材の選定

ガス台付きの3階給湯室。
天井裏には換気機器(ロスナイ)などの設備が密集しているため、取り外しが容易なジプトン天井を採用。
将来のメンテナンス費用を抑える、機能性重視の仕上げです。
限られた面積を1ミリも無駄にしない、緻密な寸法計画

執務室から女子トイレへ向かう動線計画。
事務室から直接入るのではなく、給湯室をワンクッション挟むことで、利用する女性従業員が周囲の目を気にしなくて済むよう、細やかなプライバシーの配慮を行っています。
現場の職人の負担を減らし、品質を安定させるディテールの標準化

3階女子トイレの洗面スペース。
間取りの都合上、横幅は750mmとコンパクトですが、奥行き方向を2150mmと深く確保することで、女性社員が使いやすくゆとりのある手洗い環境を整えました。
既製品の寸法を活かし、隙間処理(フィラー)すら省く徹底した「引き算」

上部の吊り戸棚は既製品の寸法のまま設置し、壁との隙間を埋める「フィラー処理」もあえて省略。
バックヤードにおける大工手間を徹底的に削減し、コストダウンを最優先しています。


















