【現場監理の裏側】“見えない壁”の品質はこうして守られる。RC造オフィスビル配筋検査のノウハウと「非常駐監理」の真実
「私たちのビルは、見えないところまで本当にしっかり造られているのだろうか?」
こんにちは。片岡直樹一級建築士事務所の片岡です。
鉄筋コンクリート(RC)造のオフィスビルやマンションの建築をお考えの施主様が、最も気にされることの一つ。それは、コンクリートで覆われてしまうと二度と見ることができない「鉄筋」や「骨格」の部分ではないでしょうか。
先日、私たちが設計監理を手がけるRC造4階建てオフィスビルの現場で、2階壁部分の「配筋検査」を行いました。
今回はこの検査を例に、私たちがお客様の大切な建物の品質をいかにして守っているのか、その具体的なプロセスと、あまり知られていない「非常駐監理」という手法の裏側を、専門的なディテールも交えながら分かりやすくお伝えします。
なぜ「配筋検査」が建物の寿命を決めるのか?
配筋検査とは、コンクリートを流し込む前に、設計図通りに鉄筋が正しく組まれているかを確認する、いわば「建物の健康診断」です。この骨組みが1本でも違っていたり、間隔がずれていたりすると、計画していた強度や耐久性を発揮できません。
一本一本、図面と照合していきます。
一度コンクリートを打設すれば、もう修正は不可能です。だからこそ私たちは、この工程に最大限の注意を払います。
“任せきり”にしない。「非常駐監理」という品質管理の本質
私たちは工事期間中、常に現場にいるわけではありません。これを「非常駐監理」と言います。
「え、ずっと見ていなくて大丈夫なの?」と不安に思われるかもしれません。しかし、これこそが、経験豊富な建築士が品質を本質的に管理するための、合理的で効果的な手法なのです。
■ ステップ1:工事初期の「モデル施工」で品質の基準を作る
工事が始まったばかりの初期段階は、職人さんたちも現場に慣れておらず、ミスが起こりやすい時期です。私たちはこの最初の工程を「モデル施工」と位置づけ、特に重点的に現場で協議を重ねます。ここで完璧な「お手本」を作り上げることで、その後の全フロアにわたる工事の品質基準を確立します。
■ ステップ2:現場監督との連携をチェック
日々の管理は現場監督が責任を持って行いますが、私たちは定期的に現場を訪れ、その進捗と品質管理の状況について詳細な報告を受けます。そして、自らの目で現場の状況をチェックします。
たとえ配筋作業の途中であっても、私たちの目で見れば、その品質管理の状態は把握できます。これは、計画段階から建物のあらゆる部分を熟知している設計者だからこそ可能なのです。
プロの目はここを見る!配筋検査の重要チェックポイント
では、具体的に何を見ているのか? 私たちが特に重要視している専門的チェックポイントの一部をご紹介します。
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- かぶり厚さの確保
「かぶり厚さ」とは、鉄筋を覆うコンクリートの厚みのことです。この厚みが不足すると、鉄筋が錆びやすくなり、建物の耐久性が著しく低下します。スペーサー(鉄筋と型枠の距離を保つ部材)が適切に配置されているか、ミリ単位で厳しく確認します。 - 鉄筋の継手位置
鉄筋は長さが決まっているため、途中でつなぎ合わせる必要があります。この「継手」が同じ場所に集中すると、そこが構造的な弱点になってしまいます。継手の位置が設計図通りに分散されているか、入念にチェックします。 - 開口部まわりの補強筋
窓やドア、配管が通る穴(スリーブ)の周りは、力が集中しひび割れが起きやすい部分です。設計図通りに斜めの補強筋などが正しく配置されているかを確認し、建物の耐震性を確保します。
- かぶり厚さの確保
私たちは、こうした無数のチェック項目をただこなすのではなく、なぜそれが必要なのかという本質を現場の職人さんたちと共有することで、チーム全体の品質に対する意識を高めています。
2階は1階の内壁の転用型枠を置く場所でいっぱいです。
まとめ:見えない部分への情熱が、価値を創る
私たちの仕事は、単に図面通りかを確認するだけではありません。
「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」
これは建築士法に定められた工事監理の定義ですが、私たちはその条文の奥にある「建築主の代理人として、その財産と安全を生涯にわたって守る」という責任を胸に、現場に臨んでいます。
鉄筋コンクリート造の堅牢な建物を建てることは、大きな投資です。だからこそ、その価値を維持するために、私たちは見えない部分にこそ最大の情熱と技術を注ぎ込みます。
1階倉庫部分は内壁型枠が脱型されて、2階に転用するために壁型枠は2階に移動しました。
南側から見た完成予想模型です。
現場は着工から262日が経過し、今後は2階コンクリート打設へと進んでいきます。
着工から途中3か月地中障害が発生して計画変更で工事が止まりましたが、現在は順調に進んでいます。
「この事務所は、裏側までちゃんと見せてくれる」
そう信頼していただけるパートナーとして、お客様の建築プロジェクトを成功に導くことをお約束します。
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